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コーヒー基礎知識

From seed to cup ~ 一粒のコーヒーの実から一杯のカップまで ~

第10回 生豆の保管(日本国内)

この原稿を書いている(6月中旬)、昨年、収穫された北半球の新豆(中米、東アフリカ)が続々入港しています。新しい豆のもつ新鮮な風味は、爽やかで新茶を思わせるものがあります。毎年楽しみな時期でもあります。

輸入された生豆は、港付近の倉庫に保管され、使用に応じて焙煎工場や店舗などに出荷されます。 コーヒーは農産物であり、生豆は時間経過とともに品質は変化していきます。一般的に入庫したばかりのものをニュークロップ、当年産のものをカレントクロップ、前年度産のものをパストクロップ、それより前のものをオールドクロップと呼びます(日数など厳格な定義はありません)。
前述した北半球の場合11月~翌年3月の期間に収穫、生産処理、精製を終え、早いものは3月出港し、日本には5月以降に到着します。コーヒー風味については、今後詳しく説明することとしますが、到着したばかりの鮮やかな緑の新豆には、一般的に、爽やかな酸味、新鮮な果実やハーブ類を思わせる爽やかな風味があります。品質の高いものは甘みが感じられ、比較的浅い焙煎でその良さが感じられます。

到着後に迎える日本の夏は、高温多湿で、生豆にとっては大変厳しい環境条件です。ひと夏終えた10月になるとコーヒーの風味には明らかに変化がみられます。新豆時に感じられた新鮮な風味がやや色褪せてきます。これは生豆に含有される香気成分の揮発や劣化によるものです。香気成分はその多くがコーヒー油脂分に含有されているのですが、油脂の劣化と香気成分の揮発は比較的早く起こります。
生豆の種類にもよるのですが、もう1つの劣化はコーヒー自身の呼吸による糖質分の損失です。生豆はパーチメント殻を失ったとはいえ、種子であり、まだ生きています。糖質分が損失していくと、風味では、甘みの低下、酸味のキレがなくなる、最終的には木のような風味が感じられるようになり、焙煎度合いを若干深くするなど、より美味しく味わうための工夫が必要です。1年を経過してくるとこれが顕著になります。前回説明しました 15度前後の定温保管は劣化遅延に有効です。

インドネシア・スマトラ島のマンデリンを現地の高温多湿化で、数年放置したエイジド・スマトラという特殊な豆がありますが、生豆は色褪せ、黄色を通り越し、レンガ、枯葉のような茶褐色となっています。とても美味しそうには見えないのですが、焙煎、抽出して風味を味わうと、枯葉、タバコ、カラメル、そして粘度の高い蜜のような触感があり、実に不思議なものです。通常コーヒー豆はワインのように熟成には向かないとされているのですが、このような例外もあり、コーヒーの奥深さを感じます。

次回は焙煎についてお話したいと思います。

フレッシュな生豆
エンジド・スマトラ生豆